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最高裁判所第二小法廷 昭和62年(オ)520号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人坂井利夫、同金岡昭、同片坐正俊、同北原昌文の上告理由第一点について

学校行事も教育活動の一貫として行われるものである以上、教師が、その行事により生じるおそれのある危険から生徒を保護すべき義務を負っており、事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務を負うものであることはいうまでもない。本件高等専門学校の本件山岳部春山合宿が学校行事として行われたこと、いずれも山岳部顧問である小泉孝一助教授及び中山忠雄講師が公務出張により同合宿の引率指導をしていたことは原審の適法に確定したところであり、その他原審の適法に確定した事実関係の下において、小泉助教授及び中山講師には、同合宿に参加した学生をその実施により生じるおそれのある危険から保護すべき注意義務があったものとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第二点について

所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、右事実関係の下において、本件春山合宿に参加した者が雪崩に遭難して死亡したことにつき、小泉助教授及び中山講師に注意義務違反があったとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 香川保一 裁判官 藤島 昭 裁判官 奥野久之 裁判官 中島敏次郎)

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